NISAを始めた方、またはこれから始めようとしている方に、次に知っておいていただきたい制度があります。
それがiDeCo(イデコ)です。
結論から言うと、iDeCoは老後の自分を守るために、NISAとは別枠で考えたい制度です。
NISAは、将来のためにお金を育てながら、必要になったときに取り崩すこともできる制度です。
一方でiDeCoは、原則60歳まで引き出せない代わりに、税金面で大きなメリットがあります。
NISAは「自由度の高い資産づくり」
iDeCoは「老後のための資産づくり」
どちらが正解というより、役割が違います。
この記事では『ひとり立ちマネー』目線で、
iDeCoの基本、NISAとの違い、女性が使うときに気をつけたいポイントを、初心者の方にも分かりやすくお伝えします。
iDeCoとは、自分で作る老後の年金
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称です。
少し難しい名前ですがざっくり言うと、自分でお金を出して自分で運用し、老後に受け取る私的年金制度です。
公的年金は、国の制度として将来受け取る年金。
iDeCoは、それに上乗せする形で、自分で準備する老後資金です。
毎月決めた金額を積み立て、そのお金を投資信託や定期預金などで運用していきます。
そして、原則60歳以降に、一時金や年金の形で受け取ります。
ここで大事なのは、iDeCoは「貯金」とは違うということです。
銀行預金のように、必要になったらすぐ引き出せるお金ではありません。
原則として60歳まで引き出せないため、教育費、住宅費、生活費の予備費として使うお金には向きません。
なお、iDeCoに加入できるのは、現在は原則20歳〜65歳未満の方です(2026年12月からは70歳未満まで広がる予定です。くわしくは後半でお伝えします)。
NISAとiDeCoの違い
NISAとiDeCoは、どちらも資産形成に使える制度です。
ただし、目的や使い方はかなり違います。
| 比較項目 | NISA | iDeCo |
| 主な目的 | 資産形成全般 | 老後資金づくり |
| 税メリット | 運用益が非課税 | 掛金控除・運用益非課税・受取時控除 |
| 引き出し | いつでも売却・引き出し可能 | 原則60歳まで引き出せない |
| 使いやすさ | 自由度が高い | 制約はあるが節税効果が大きい |
| 向いているお金 | 将来使う可能性のあるお金 | 老後まで使わないお金 |
| 最低積立額 | 金融機関や商品による | 月5,000円から |
| 途中停止 | しやすい | 掛金停止や変更はできるが手続きが必要 |
NISAは、老後資金だけでなく、教育費、住宅資金、将来の選択肢を広げるお金にも使いやすい制度です。
一方、iDeCoは老後資金に特化しています。
60歳まで引き出せないという制約があるため、
自由度はNISAより低いですが税金面でのメリットがあります。
私の考えとしては、
まずは生活防衛資金を確保し、NISAで自由度のある自分名義の資産づくりを始める。
そのうえで、老後まで使わないお金をiDeCoで積み立てる。
この順番が、初心者の方には安心だと思います。
生活防衛資金の目安や貯め方については、こちらで詳しく解説しています。
iDeCoの3つの税メリット
iDeCoの大きな特徴は、税金面でのメリットがあることです。
主なメリットは3つあります。
1. 掛金が全額所得控除になる
iDeCoで積み立てた掛金は、全額が所得控除の対象になります。
所得控除とは、税金を計算するときに、課税される所得を減らしてくれる仕組みです。
たとえば、毎月1万円をiDeCoで積み立てると、年間12万円が所得控除の対象になります。
所得税や住民税を払っている人なら、その分、
税負担を軽くできる可能性があります。
ここで注意したいのは、「必ず現金が戻ってくる」という意味ではないことです。
会社員の場合は、年末調整で手続きをするケースが多く、自営業の方などは確定申告で手続きします。
また、所得税や住民税をほとんど払っていない場合は、所得控除のメリットが小さくなることもあります。
特に、専業主婦の方や扶養内パートの方は、節税メリットが出にくい場合があります。
iDeCoは自分の働き方や収入によって、メリットの大きさが変わります。
2. 運用益が非課税になる
通常、投資で利益が出るとその利益に税金がかかります。
しかし、iDeCoの中で運用して得た利益は非課税です。
増えた分をそのまま再投資できるため、長い時間をかけて老後資金を育てやすくなります。
これはNISAと似ている部分です。
ただし、iDeCoはあくまで老後資金用の制度です。
運用益が非課税だからといって、使う予定のお金まで入れてしまうのはおすすめしません。
3. 受け取るときにも控除がある
iDeCoは、受け取るときにも税制上の優遇があります。
受け取り方は主に、
- 一時金としてまとめて受け取る
- 年金として分割で受け取る
- 一時金と年金を組み合わせる
という方法があります。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」の対象になります。
ただし、受け取り時の税金は、退職金の有無や受け取り方によって変わります。
ここは少し複雑なので、将来受け取るときに、改めて確認すれば大丈夫です。
今の段階では、
iDeCoは積み立てるとき、運用しているとき、受け取るときの3段階で税メリットがある制度と覚えておけば十分です。
女性がiDeCoを使う前に知っておきたい注意点
iDeCoはとても良い制度ですが、誰でもすぐ満額で始めればいい、というものではありません。
特に女性は、結婚、出産、育休、転職、扶養に入る、働き方を変えるなど、人生の途中で収入や働き方が変わることがあります。
だからこそ、iDeCoはメリットだけでなく、注意点も知ったうえで使うことが大切です。
1. 原則60歳まで引き出せない
iDeCoの一番大きな注意点は、原則60歳まで引き出せないことです。
これはデメリットでもありますが、見方を変えると老後まで使わずに守れる仕組みでもあります。
ただし、今の生活が不安定な状態でiDeCoを始めてしまうと、急な出費があったときに困る可能性があります。
まず優先したいのは、生活防衛資金です。
失業、病気、家族の事情、収入減などがあっても、しばらく生活できるお金。
このお金がないままiDeCoに入れてしまうと、本当に必要なときに使えません。
iDeCoは、生活防衛資金を確保した後に考える。
この順番はとても大切です。
2. 専業主婦・扶養内パートは節税メリットが小さいことがある
専業主婦の方や扶養内で働いている方も、条件を満たせばiDeCoに加入できます。
ただし、所得税や住民税をあまり払っていない場合、掛金の所得控除による節税メリットは小さくなります。
たとえば、所得税を払っていない人がiDeCoを始めても、「掛金を出した分、所得税が戻る」という効果は基本的にありません。
もちろん、運用益が非課税になるメリットや、老後資金を自分名義で積み立てられるメリットはあります。
しかし、iDeCoの大きな魅力である「掛金の所得控除」を十分に活かせるかどうかは、人によって違います。
扶養内で働いている方は、まず自分にどれくらい税メリットがあるのかを確認してから始めると安心です。
3. 会社員でも掛金の上限は人によって違う
iDeCoは、職業や勤務先の年金制度によって、毎月積み立てられる上限額が違います。
たとえば、自営業、会社員、公務員、専業主婦では上限額が異なります。
今の上限額(2026年7月時点)を、立場ごとにまとめると次のとおりです。
| あなたの立場 | 毎月の掛金の上限 |
| 自営業・フリーランス | 6.8万円 |
| 会社員(勤務先に企業年金がない) | 2.3万円 |
| 会社員(企業年金あり)・公務員 | 2.0万円 |
| 専業主婦(夫) | 2.3万円 |
会社員の場合も、勤務先に企業型DC(企業型確定拠出年金)や確定給付企業年金(DB)などがあるかどうかで、上限が変わります。
「私はいくらまでできるの?」と思ったら、勤務先の担当部署や証券会社のiDeCoページで確認してみましょう。
企業型DCを導入している会社は、iDeCoに入れるか、いくらまで掛けられるかが、会社の制度によって変わることがあります。
4. 産休・育休中は節税メリットが変わることがある
産休・育休中は、収入が一時的に減ることがあります。収入が減ると、所得税や住民税の負担も変わります。
そのため、iDeCoの掛金による節税メリットも、通常勤務しているときとは違ってくる可能性があります。
もちろん、iDeCoを続けること自体は老後資金づくりになります。
ただ、育休中に家計が不安定になる場合は、無理に掛金を高くしない方が安心です。
必要に応じて、掛金を見直すことも考えましょう。
5. 手数料がかかる
iDeCoには、口座開設時や毎月の管理に関する手数料がかかります。
具体的には、主に次の手数料がかかります(2026年7月時点)。
- 加入時
-
2,829円(はじめの1回だけ)
- 口座を持っている間
-
月171円〜 (制度共通の手数料。これに金融機関ごとの運営管理手数料が上乗せされることがあります)
- 受け取るとき
-
給付のたびに440円
少額で始めるほど、手数料の割合は大きくなります。だからこそ、金融機関を選ぶときは、次の点を確認しておくと安心です。
- 運営管理手数料(無料の金融機関を選ぶのがポイント)
- 商品ラインナップ
- 低コストの投資信託があるか
- NISA口座と一緒に管理しやすいか
iDeCoは長く続ける制度なので、手数料の差は、積み重なると意外と大きくなります。
iDeCoに向いている人・慎重に考えたい人
iDeCoは、老後資金づくりに役立つ制度です。
でも、全員が今すぐ始めるべきとは限りません。
向いている人と、慎重に考えたい人を
『ひとり立ちマネー』の視点で整理してみます。
iDeCoに向いている人
- 生活防衛資金がある程度ある人
- NISAを無理なく続けられている人
- 老後資金を別枠で作りたい人
- 所得税や住民税を払っている人
- 60歳まで使わないお金として積み立てられる人
- 強制的に老後資金を残したい人
特に、会社員や自営業で所得税・住民税を払っている人は、掛金の所得控除メリットを受けやすいです。
また、「老後資金は別に分けておきたい」という人にも向いています。
iDeCoは、自由に引き出せないからこそ、老後の自分のために残しやすい制度です。
慎重に考えたい人
- 生活防衛資金がまだ少ない人
- 近いうちに大きな出費がある人
- 毎月の家計に余裕がない人
- 扶養内パートや専業主婦で、所得控除メリットが小さい人
- 60歳まで引き出せないことに不安が大きい人
お金の備えには順番があります。
まずは、日々の生活費。
次に、生活防衛資金。
その次に、NISAなど自由度の高い資産づくり。
さらに余裕があれば、iDeCoで老後専用のお金を作る。
この順番で考えると、無理なく続けやすくなります。
どこで始める?私が使っているのはSBI証券
iDeCoは、銀行や証券会社などの金融機関で申し込みます。
どこで始めるかによって、選べる商品や手数料、管理のしやすさが変わります。
私が初心者の方におすすめしやすいと感じているのは、SBI証券です。
理由は、NISA口座と一緒に管理しやすく、低コストの投資信託も選びやすいからです。
前回の記事では、NISA口座をどこで開くかについてお話ししました。
すでにSBI証券でNISA口座を持っている人なら、同じ証券会社でiDeCoも検討しやすいと思います。
資産形成を始めたばかりの頃は、管理する場所が増えすぎると混乱しやすくなります。
その点、NISAとiDeCoを同じ証券会社で確認できると、資産全体を見やすくなります。
iDeCoは長く付き合う制度です。
始める前には必ず、手数料、商品ラインナップ、サポート体制を確認しましょう。
まずは月5,000円からでいい
iDeCoというと、「しっかり老後資金を作らないと」と思って、最初から大きな金額を入れたくなるかもしれません。
でも、初心者の方は、まず月5,000円からでも十分です。
大切なのは、無理なく続けられることです。
iDeCoは、原則60歳まで引き出せません。
だからこそ、毎月の掛金は慎重に決める必要があります。
たとえば、最初から上限いっぱいまで積み立ててしまうと、家計が苦しくなったときに負担になることがあります。
特に30代・40代女性は、ライフイベントが多い時期です。
結婚、出産、育休、子どもの教育費、住宅購入、親の介護、自分の働き方の変化。
これから先、予定していなかった出費が出てくることもあります。
だからこそ、iDeCoは「できるだけ多く入れる」よりも、長く続けられる金額で始めることが大事です。
月5,000円でも20年、30年と続ければ、老後の自分を支える大切なお金になります。
これからの制度改正にも注意(時期が2つに分かれます)
iDeCoは、近いうちに大きな制度改正が予定されています。
時期が2段階に分かれているので、整理しておきます。
- 2026年12月から
-
加入できる年齢が「65歳未満」から「70歳未満」に広がる予定
- 2027年1月から
-
毎月の掛金の上限が引き上げられる予定
(たとえば自営業は6.8万円→7.5万円、企業年金のない会社員は2.3万円→6.2万円など)
つまり、これまでより長く・多く積み立てられる方向に変わっていきます。
ただし、これらは予定で、細かい条件は変わる可能性があります。
実際に申し込むときは、必ずiDeCo公式サイトや金融機関の最新情報を確認してください。
特に会社員の方は、勤務先の企業年金制度によって掛金の上限が変わることがあります。
自分がいくらまで積み立てられるのかは、申し込み前に確認しておきましょう。
まとめ|iDeCoは老後の自分名義資産を作る制度
iDeCoは、節税しながら老後資金を積み立てられる制度です。
掛金が所得控除になり、運用益は非課税。
さらに、受け取るときにも控除があります。
ただし、原則60歳まで引き出せないという大きな制約もあります。
だからこそ、iDeCoは老後の自分を守るために、NISAとは別枠で考える制度です。
- NISAは
-
将来の選択肢を広げるためのお金。
- iDeCoは
-
老後の自分を守るためのお金。
この2つを同じものとして考えず、それぞれの役割を分けて使うことが大切です。
そして何より、順番を間違えないこと。
まずは生活費を整える。
生活防衛資金を作る。
NISAで自由度のある資産を育てる。
そのうえで、老後まで使わないお金をiDeCoで積み立てる。
自分名義の資産は、人生の選択肢を守ってくれます。
iDeCoは、その中でも「未来の自分」を守るための制度です。
今の自分の生活を大切にしながら、老後の自分にも少しずつお金を届けていく。
そんな気持ちで、無理のない金額から考えてみてください。
なお、この記事は、私自身が調べ、実際に制度を使ってきた経験と考えをもとに書いています。
iDeCoを始めるかどうか、金融機関をどこにするかは、あなたの働き方・収入・家計によって最適な答えが変わります。
最終的な判断はご自身の状況に合わせて行ってください(迷ったときは、勤務先の担当部署やお金の専門家に相談すると安心です)。くわしくは免責事項もあわせてご覧ください。
お金を「生活資金」「生活防衛資金」「投資資金」に分ける考え方については、こちらでも詳しくお伝えしています。

