母が遠方の墓じまいをした話|費用は300万円超、元気なうちに考えたいこと

遠方にある実家のお墓。
「自分たちで、この先も管理していけるだろうか」と、ふと不安になることはありませんか。

墓じまいを終えた母は、私にこう言いました。
「大変だったけれど、肩の荷が下りた」

この記事では、母が実際に経験した墓じまい
—正確には「改葬(かいそう)」— について、
また、墓じまいと改葬の違い、手続きの流れ、宗派や親族のこと、かかった費用、
そして最後に母が言った「肩の荷が下りた」という言葉まで、順番にお伝えします。

遠方のお墓をどうするか考えている方の、ひとつの参考になればうれしいです。

目次

「墓じまい」と「改葬」は、実は違う

まず、言葉を整理させてください。実は、わたし自身も混同していました。

墓じまい

今あるお墓を撤去して、墓地を管理者に返すこと
(一般的に使われる言葉)

改葬(かいそう)

埋葬されている遺骨を、別のお墓や納骨堂へ移すこと
(法律で定められた言葉)

母がしたのは、元のお墓を墓じまいして、遺骨を兄が暮らす街のお寺へ移す——つまり「改葬」でした。
お墓そのものをなくして供養を終えるのではなく、新しく購入したお墓へ移したのです。

改葬をするには、今、遺骨がある場所の市区町村長が発行する「改葬許可証」が必要です。
母も、埋葬されている場所の市役所へ申請して、改葬許可を受けました。

墓じまいと改葬って、別のことだったんだね

そう。遺骨を移すのは”改葬”で、市区町村の許可がいるの

※改葬の手続きは、自治体によって細かい点が異なります。詳しくは、遺骨のある地域の市区町村の窓口で確認してください。

なぜ、母は墓じまいを決めたのか

当時、母がこの決断をしたのには、理由があります。
自分もこれから歳をとっていく。
いつか車の運転をやめ、免許を返納する日も来る。
そうなれば、遠方のお墓へ通うことは難しくなります。

そして母には、わたしを含めて3人の子どもがいますが、それぞれ遠方で暮らしていたり、そのお墓を継いで守っていく状況ではありませんでした。

「自分が元気なうちに決めておかないと、いつか子どもたちに負担をかけてしまう」——母は、そう考えたそうです。

墓じまいと改葬は、想像以上に大変だった

お墓

墓じまいは、一度現地へ行けば終わるものではありませんでした。

お寺や墓地管理組合への相談、お墓の確認、申請書類の受け取り、役所での手続き、遺骨の掘り出し、供養など、さまざまな用事があります。
そのたびに、母は片道約40kmの道のりを、車で通いました。

墓じまいを始めてから足を運んだ回数は、全部で10回ほどだったそうです。
往復すると約80kmですから、10回なら移動距離だけで約800km
運転時間も、往復約2時間を10回と考えると約20時間です。
実際には、現地での話し合いや手続き、待ち時間もあります。

墓じまいにはお金がかかりますが、遠方にある場合は、それだけでなく時間と体力も必要です。
母が元気で、自分で車を運転できるうちだったからこそ、進められたことだったと思います。
(母は現在、車の運転はしていません。)

あのとき先送りしていたら、母自身が同じように墓じまいを進めることは難しかったでしょう。

宗派の違うお寺へ、お墓を移すことはできるのか

お墓の移転先を考えるとき、母にはもう一つ気になることがありました。
元のお墓があったお寺と、移転先のお寺の宗派が違っていたのです。

宗派が違うお寺へ、遺骨を移すことができるのか。
そもそも、どのように新しいお墓を探せばいいのか
これは墓じまいを考える人にとって、不安になりやすい点だと思います。

母が移転先候補のお寺へ相談したところ、そのお寺では、以前のお墓の宗派が違っていても受け入れてもらえるとのことでした。
そのため、宗派が違うことは、今回の改葬では問題になりませんでした。

ただし、どのお寺でも同じように受け入れてもらえるとは限りません
寺院によって、受け入れの条件や必要な手続き、その後の法要の方法などは異なる可能性があります。

新しいお墓を購入してから「宗派が違うため納骨できない」と分かると困ります。
移転先を決める段階で、「以前のお墓とは宗派が違いますが、受け入れてもらえますか」と確認しておくことが大切です。

なお、改葬の手続きでは、先に新しい墓地や納骨先を決め、移転先の管理者から受入証明書や墓地使用許可証などを受け取るよう案内している自治体もあります。
必要書類は自治体によって異なるため、現在のお墓がある市区町村と移転先の双方へ確認したほうが安心です。

母が行った改葬手続きの流れと費用

母は、まず元のお墓があるお寺や墓地管理組合に相談しました。
そして、兄が暮らしている街のお寺へお墓を移すことを決めました。
母のケースでは、おおむね次のような流れで進みました。

  1. 親族へ墓じまいと改葬の意向を伝える
  2. 移転先となるお寺とお墓を決める
  3. 元のお寺と墓地管理組合へ相談する
  4. 必要な申請書類を受け取る
  5. 書類を持って市役所の生活環境課で手続きをする
  6. 元のお墓で閉眼供養(へいがんくよう)を行う
  7. 土葬された遺骨を掘り出す
  8. 掘り出した遺骨を火葬する
  9. 元の墓石を撤去し、墓地を返還する
  10. 新しいお墓へ遺骨を納め、開眼供養(かいがんくよう)を行う

10回も通ったのは、こんなにたくさんの用事があったからなんだね

そう。遠方だと、お金だけじゃなく時間と体力もいるの

母の場合、墓地管理組合への申請手続きとして1万5,000円を支払い、申請書類を持って市の生活環境課で手続きをしました。

なお、「閉眼供養」や「開眼供養」は、宗派や地域によって呼び方が異なることがあります。
お寺から案内された名称や内容を確認しながら進めるのがよいと思います。

改葬許可の申請先は、遺骨が現在納められている墓地のある市区町村です。一般的には、現在の墓地管理者による埋葬・埋蔵の証明や、移転先の墓地による受入証明などを求められますが、必要書類や申請方法、手数料は自治体によって異なります

親族3人の同意を得てから進めた

お墓は、管理する人だけの問題ではありません。
そこには家族や親族それぞれの思いがあります。
母は墓じまいを進める前に、夫のきょうだい3人へ説明し、同意を得ました。

墓じまいについて考えるとき、法律上、誰が決められるのかということだけでなく、親族の気持ちも無視できません。
特に、先祖代々のお墓や、複数の家族が関わってきたお墓の場合は、突然話を進めると、親族間のトラブルにつながる可能性があります。

母は、実際に今後の墓守りを担う人がいないこと、自分が高齢になれば通えなくなること、子どもたちへ負担を残したくないことを説明しました。

全員が同じ気持ちになることは難しくても、なぜ今整理したいのかを伝え、できるだけ同意を得てから進めることが大切だと思います。

母の墓じまいと新しいお墓にかかった費用

母の墓じまいと改葬にかかった主な費用は、次のとおりです。

内容費用
土葬された遺骨の掘り出し・火葬など約90万円
墓地管理組合への申請手続き1万5,000円
離檀料・閉眼供養料10万円
移転先での開眼供養料5万円
新しく購入したお墓約200万円
合計約306万5,000円

合計すると、300万円を超えました。

母自身も、墓じまいにはある程度お金がかかるだろうと思っていたそうです。
しかし、初めての経験だったため、最初は費用の想像がつきませんでした。
さらに、元のお墓が土葬だったことで、遺骨の掘り出しや火葬の費用が加わりました。
新しくお墓を購入した費用も、大きな割合を占めています。

そのため、この金額を、一般的な墓じまいの相場として考えることはできません
費用は、墓地の場所、埋葬されている人数、墓石の大きさ、遺骨の状態、移転先によって大きく異なります。

墓じまいを考える前に確認したいこと

母の経験から、墓じまいを考えるときは、少なくとも次のことを確認しておいたほうがよいと感じました。

  • 現在のお墓はどこにあるのか
  • 墓地の名義人や管理者は誰か
  • 誰の遺骨が納められているのか
  • 火葬された遺骨か、土葬か
  • 今後、誰がお墓を管理するのか
  • 親族の同意を得られるか
  • 遺骨をどこへ移すのか
  • 移転先の宗派や受け入れ条件
  • 改葬許可に必要な書類
  • 墓石の撤去や遺骨の取り出しにかかる費用
  • 新しい納骨先にかかる費用
  • お寺へ支払う費用
  • 現地へ通う回数や交通手段

古いお墓の場合、家族も詳しい状態を知らないことがあります。
まずは、お墓の管理者やお寺に相談し、お墓の状態と必要な手続きを確認することから始めるのがよいと思います。

自分たちだけで難しいときは、代行業者へ相談する方法もある

母は自分で車を運転し、お寺や墓地管理組合、役所などへ何度も足を運びながら、墓じまいと改葬を進めました。
しかし、誰もが同じように動けるとは限りません。
また何度も通う時間や交通費、体力まで考えると、業者へ依頼するほうが負担を抑えられる場合もあります。

お墓が遠方にある。
仕事や家庭の事情で、何度も現地へ行けない。
車を運転できない。
自分自身も高齢になり、手続きを進めることが難しい。
このような事情から、家族だけでは進められないことがあります。

墓じまいには、親族やお寺との話し合い、改葬許可の申請、石材店の手配、遺骨の移転先選びなど、さまざまな準備が必要です。
どこから始めればよいか分からない場合や、現地へ何度も通うことが難しい場合は、墓じまいの専門サービスへ相談する方法もあります。

お寺や霊園への連絡、行政手続きのサポート、法要の手配、遺骨の取り出し、墓石の撤去や整地などを相談もできるようです。
「相見積もりだけ」「工事の手配だけ」など、必要な部分を選んで依頼することも相談してみてはいかがでしょうか。

なお、改葬許可申請書は本人が記入するなど、依頼者自身が行う手続きはあります。

費用は1社だけで決めず、比較して確認する

墓じまいの費用は、墓石の大きさだけでなく、墓地の場所や搬出経路、作業車が入れるかどうか、必要な作業人数などによっても変わります。

最初に相談した石材店だけで決めるのではなく、可能であれば複数社から見積もりを取り、作業内容と総額を比較したほうが安心です。

見積もりでは、次の点を確認しておきましょう。

  • 墓石の撤去・運搬・処分費用
  • 墓地を更地に戻す費用
  • どこまでの作業が料金に含まれているか
  • 追加料金が発生する条件
  • 作業日数
  • 土葬など、特殊な事情への対応
  • お寺や霊園が指定する石材店の有無

※土葬された遺骨の掘り出しや火葬を伴う場合は、地域、墓地、自治体、火葬場によって必要な手続きが異なります。対応できる作業と費用について、相談時に個別に確認してください。

墓じまいを終えた母は「肩の荷が下りた」と言った

母の墓じまいには、300万円を超える費用がかかり、片道約1時間の場所へ、約10回も足を運びました。
宗派の違いを移転先のお寺へ確認し、夫のきょうだい3人にも説明しました。
さらに、元のお墓が土葬だったため、遺骨を掘り出して火葬するという、想定外の作業も必要になりました。

それでも母は、墓じまいを終えた後、こう言っています。
「肩の荷が下りた」
自分が動けなくなった後、この問題を子どもたちへ残すことも心配だったのだと思います。

墓じまいをするかどうかに、すべての家庭に共通する正解はありません
お墓を守り続ける人もいれば、永代供養墓や納骨堂へ移す人、新しいお墓へ改葬する人もいます。
家族の状況、住んでいる場所、宗派、費用、ご先祖様への思いは、それぞれ違います。

だからこそ、親が元気なうちに
「今のお墓は、将来どうするつもりなのか」
「誰が管理するのか」
「子どもに何を引き継いでほしいのか」
を話しておくことが大切です。

墓じまいは、お墓をなくすだけの手続きではありません。
これからも無理なく供養を続けられる形へ整え、次の世代へ大きな負担を残さないための準備でもあります。

母の「肩の荷が下りた」という言葉を聞いて、わたしはそう感じました。
まずは、実家のお墓が今どうなっているのか、家族と話してみることから始めてみませんか。

※改葬の必要書類、申請方法、手数料、土葬された遺骨の取り扱いは、自治体、墓地、寺院、火葬場によって異なります。
実際に進める際は、現在のお墓がある自治体と墓地管理者、移転先の管理者へ事前にご確認ください。

この記事を書いた人

「ひとりだちノート」運営|元銀行員。
 
家計・資産づくり、親の見守りや暮らしのサポートを実体験から発信。
自分と親の「これから」を少し安心にするヒントをお届けします。

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