親が亡くなった後、実家に残された物を、誰が片付けるのか。
親と離れて暮らす人にとって、いつか向き合うかもしれない、重い問題です。
わたしの母は、誰も住まなくなった実家の片付けを、二度にわたって経験しました。
何十年分もの物を、仕事を続けながら、ほとんど一人で。
「実家じまい」とも呼ばれるこの片付けは、想像以上に大変な道のりでした。
今回は、母の実体験から、実家じまいの大変さ、家族だけで難しいときの「専門業者」という選択肢、そして母が始めた「物を増やさない暮らし」についてお伝えします。
祖父母が亡くなった後、叔母が実家に住み続けた

母の実家は、地方にある古い一軒家です。
わたしの祖父母、つまり母の両親が暮らしていた家で、母が生まれ育った場所でもあります。
祖父母が亡くなった後は、母のきょうだいである叔母が、その実家で一人暮らしをするようになりました。
叔母は体調がすぐれないこともあり、母は叔母の一人暮らしを心配して、頻繁に実家へ通うようになりました。
最初は、叔母の様子を見に行くことが主な目的だったと思います。
しかし、何度も実家へ通ううちに、母は家の中が少しずつ散らかっていくことに気づきました。
普段使っている部屋だけでなく、あまり入ることのなかった部屋も見て回った母は、そこに残された物の多さに驚いたそうです。
実家片付けは、想像以上に大変だった
部屋には、たくさんの物があふれていた
家の中には、たくさんの物がありました。
整理されないまま積み重なっている物。
長い間、使われていない物。
同じような物が、いくつも置かれていることもありました。
「これは、どうしたものか」——母は家の中を見て、途方に暮れたそうです。
ただし、これらをすべて叔母が増やしたわけではありません。
祖父母が亡くなった後も、二人が生活していた頃の物が、家にはたくさん残されていました。
叔母がそのまま家に住み続けたため、家全体を空にするような遺品整理はできなかったのです。
祖父母の物が残る家に、叔母が暮らす中で持った物が加わり、何十年分もの家財が積み重なっていきました。
祖母の着物と、祖父の大工道具
家には、祖父母が生きていた頃の物が数多く残されていました。
祖母の古い着物。大工だった祖父が、仕事で使っていたさまざまな道具。
家具や生活用品など、二人が日々の暮らしで使っていた物。
それらが、亡くなった後も手つかずの状態で残っていました。
祖父の大工道具の中には、まだ使える物もあったと思います。
祖母の着物も、専門の買取店へ相談すれば、引き取ってもらえる物があったかもしれません。
けれど、母には一つずつ価値を調べ、売却先を探す余裕がありませんでした。
物が少なければ、リサイクルショップへ持ち込むこともできたでしょう。
しかし、家一軒に残された大量の物を前にすると、売れるかもしれない物を一つずつ選び、店へ運ぶこと自体が、大変な作業になります。
働きながら、休日は片付けに追われた
当時、母はフルタイムで働いていました。平日は仕事をし、休みになると実家へ通って片付ける。
来る日も来る日も、その繰り返しだったそうです。

働きながら、ひとりで…大変だったんだね



そう。一日片付けても、家の景色がほとんど変わらない日もあったみたい
家一軒分の物を片付けるには、物をゴミ袋へ入れるだけでは済みません。
残す物と捨てる物を判断する。
ゴミを種類ごとに分別する。
粗大ゴミとして出す物を選ぶ。
重い物を家の外へ運び出す。
自治体の決まりを調べて、決められた方法で処分する。
この作業を、何度も繰り返さなければなりません。
叔母の生活を気にかけながら、祖父母の遺品と大量の家財を整理する。
仕事を続けながら一人で背負うには、あまりにも大きな負担だったと思います。
使えそうな物も、すべて廃棄するしかなかった
母は、使えそうな物も含めて、最終的にはほとんど廃棄したと言っています。
今なら、着物や大工道具を専門業者へ査定に出す方法も考えられます。
必要としている人へ譲ることもできたかもしれません。
しかし、当時の母には、そのような手段を一つずつ調べて実行する時間も気力もありませんでした。
すでに大量の物を仕分け、運び、処分することで精いっぱいだったのです。
「まだ使えそうだから、もったいない」
そう思っても、片付けを終わらせるためには、捨てるしかありませんでした。
これは、大切なことを教えてくれます。
物を残しておけば、いつか家族が価値を調べて売ってくれるとは限りません。
残された物が多すぎれば、片付けを担う家族は、売ることや譲ることまで考えられなくなります。
自分にとって価値のある物でも、その価値を家族が知らなければ、不用品として処分される可能性があるのです。
叔母の施設入所、そして二度目の片付け
その後、叔母は一人で生活することが難しくなり、特別養護老人ホームへ入所しました。
施設への入所手続きや、叔母のお金の管理なども母が支えました。


叔母の施設入所を母がどのように支えたのかは、この記事でお話ししています。
叔母が施設へ入ると、実家には誰も住まなくなりました。
ただ、叔母が生きている間は、家の中に叔母の物が残されています。
祖父母の遺品を片付けた後も、実家の整理がすべて終わったわけではありませんでした。
そして、叔母が亡くなり、実家を手放すことになったとき、母は残された叔母の物をもう一度片付けました。
叔母は編み物などの手芸が好きだったため、家には毛糸や布がたくさん残されていました。
母にとって実家の整理は、一度で終わったものではありません。
長い年月の中で、二度にわたって向き合わなければならない問題だったのです。
実家じまいは、どの家庭にも起こりうる
実家の近くに住む一人へ、負担が集中することがある
母は、実家の近くに住んでいました。
そのため、叔母の様子を見に行き、家を片付けることができました。
しかし、それは「母に時間や余裕があった」という意味ではありません。
母もフルタイムで働いていました。
それでも実家の近くに住んでいるという理由で、実際の作業の多くを担うことになりました。
現代では、子どもが進学や就職、結婚などで地元を離れ、親と遠く離れて暮らしている家庭も少なくありません。
わたし自身も、当時すでに遠方で暮らしていました。
親が亡くなった後、遠く離れた実家へ何度も通い、家一軒を片付けるのは簡単ではありません。
仕事を休む必要があるかもしれません。
交通費や宿泊費もかかります。
重い家具や家電を運べる家族がいないこともあります。
兄妹がいても、それぞれに仕事や家庭があれば、片付けの日程を合わせるだけでも大変です。
わたしの知り合いにも、遠い田舎にある実家へ戻る予定はなく「親が亡くなった後、あの家をどうすればいいのだろう」「遺品整理や片付けのことを考えると、気が重い」と話す人がいます。
実家じまいは、一部の家庭だけの特別な問題ではありません。
親と離れて暮らす人が増えている今、多くの家庭がいつか直面する可能性のある問題だと思います。
家族だけで難しいときは、専門業者へ相談する方法も
母は、長い時間をかけて自分で片付けましたが、すべての家庭で同じことができるとは限りません。
- 実家が遠方にある
- 仕事や子育てで時間を取れない
- 自分自身も高齢で、重い物を運べない
- 片付けを担えるきょうだいや親族がいない
- 家の中に物が多すぎて、どこから手をつければよいか分からない
このような場合、家族だけで無理をして片付けようとすると、誰か一人に大きな負担がかかります。
実家の片付けでは、体力だけでなく、判断力や気力も必要です。
そのすべてを家族だけで行う必要はありません。
専門業者へ相談できる作業
母は、遺品整理や片付けの専門業者を利用していません。
そのため、わたし自身の経験として、業者へ依頼した場合の費用や作業内容をお伝えすることはできません。
ただ、母が仕事の休みを使って何度も片付けに通い、使えそうな物まで処分せざるを得なかったことを考えると、専門業者へ相談する方法もあったのではないかと思います。
遺品整理や家財整理を行う専門業者には、一般的に次のような作業を相談できます。
- 残す物と処分する物の仕分け
- 貴重品や重要書類の捜索
- 家具や家電などの搬出
- 不用品の回収や処分
- 価値がありそうな物の査定や買取
- 片付け後の清掃
- 空き家になった家の家財整理
業者によって、対応する作業や料金は異なります。
すべてを任せるのではなく、
「大切な物だけ家族で先に分ける」
「重い家具や家電の搬出だけ依頼する」
「不用品の回収と処分を依頼する」
など、家族でできることと、専門業者へ任せることを分ける方法もあります。
片付けを担う人が仕事を休み、何度も実家へ通う時間や交通費、体力まで考えると、業者へ依頼するほうが負担を抑えられる場合もあります。
相談するときに確認したいこと
片付けの費用は、家の広さだけで決まるものではありません。
家財の量、大型家具の数、搬出経路、作業に必要な人数、トラックの台数などによって変わります。
業者へ相談するときは、できれば複数の業者から見積もりを取り、金額だけでなく作業内容も比較したほうが安心です。
見積もりでは、次のような点を確認します。
- どこまでの作業が料金に含まれているか
- 家財の仕分けをしてもらえるか
- 貴重品や重要書類を探してもらえるか
- 不用品の処分費用が含まれているか
- 買取できる物は査定してもらえるか
- 作業後の清掃が含まれているか
- 追加料金が発生する条件
- 作業人数と必要な日数
- 遠方で立ち会えない場合も依頼できるか
電話で聞いた金額だけで決めず、可能であれば家の中を確認してもらい、正式な見積もりを取ることが大切です。
また、急いで契約せず、見積書の作業内容や追加料金の条件を確認してから決めたほうが安心です。
専門業者へ相談することは、家族としての役割を放棄することではありません。
母のようにすべてを一人で抱え込み、心身ともに疲れ切ってしまう前に、外部の力を借りることも、実家を整理するための現実的な方法のひとつだと思います。
母は、自分の住み替えで物をできるだけ減らした
祖父母と叔母の物を片付けた経験は、その後の母自身の暮らしにも影響しています。
母は現在、わたしが生まれ育った一軒家を離れ、駅に近い便利な場所にあるマンションで一人暮らしをしています。
一軒家からマンションへ住み替える際、母は持っていく物をできるだけ減らしました。
そして住み替えた後も、必要以上に物を増やさないようにしているそうです。
母自身は、大げさに「終活をしている」とは考えていないかもしれません。
けれど、今の暮らしに必要な物だけを選び、使わない物を手放し、むやみに増やさないことは、一つの終活といえます。
物を減らすことは、亡くなった後のためだけにするものではありません。
物が少なければ、今の自分も暮らしやすくなります。
掃除や管理が楽になり、探し物も減ります。
転倒につながる物を、床や通路へ置かずに済むというメリットもあります。
今の暮らしを整えることが、結果として将来の家族の負担を減らすことにつながるのです。
元気なうちに、少しずつ物を見直す
親の家に物が多いと感じても、子どもが突然「全部捨てた方がいい」「こんな物は、もういらないでしょう」と言えば、親は責められているように感じるかもしれません。
物には、本人にしか分からない思い出や理由があります。
まずは、本人の気持ちを聞くことが大切です。
いきなり家中を片付けるのではなく、次のようなことから少しずつ始められます。
- 同じ物がいくつもないか確認する
- 何年も使っていない物を一つ見直す
- 大切な物と処分してよい物を聞く
- 着物や工具など、価値が分かりにくい物を整理する
- 写真や手紙を誰に残したいか確認する
- 通帳や保険証券など、重要書類の場所を共有する
- 大きくて重い物を、元気なうちに処分する
「これは大事な物なの?」「誰かに残したい物はある?」「使わなくなったら、どうしたい?」——そんな会話から始めるだけでも、将来の片付けは変わってくると思います。
まとめ|残された物は、いつか誰かが片付ける
物は、持っている本人にとっては、思い出や暮らしの一部です。
けれど、自分で整理できなくなったとき、いつか家族の誰かが、一つずつ判断し、運び、処分することになります。
母の実家じまいから、わたしが感じたことは、この4つです。
- 誰も住まなくなった実家の片付けは、想像以上に大変
- 離れて住む親子が増えた今、実家じまいはどの家庭にも起こりうる
- 家族だけで難しいときは、専門業者へ相談するのも選択肢
- 元気なうちに物を減らすことは、自分の暮らしを整え、将来の家族の負担も減らす
まずは、実家にどのくらい物があるのか、親が大切にしている物は何か。
帰省や電話のときに、少しずつ話してみることから始めてみませんか。
※片付け業者の対応内容や料金は、地域、家の広さ、家財の量、搬出経路、作業人数などによって異なります。実際に依頼するときは、複数の業者を比較し、見積金額、作業内容、追加料金が発生する条件などを確認してください。






