親が年齢を重ねても元気に暮らしているうちは、介護について具体的に考える機会はあまりないかもしれません。
私自身も、今のところ親の介護を経験していません。
父はすでに他界し、80代の母は幸い今も元気に暮らしています。
ただ、私の身近には、高齢になった叔母が一人で暮らすことが難しくなり、母が施設への入居を支えた経験があります。
その様子を見ていて感じたことがあります。
介護で家族に求められるのは、自宅で身体介護をすることや、自分のお金で介護費用を負担することだけではないということです。
どこに相談すればよいかを探す。
本人と一緒に暮らす場所を考える。
必要な手続きを支える。
そして、本人のお金が本人の暮らしのために使われるよう支える。
そうしたことも、家族ができる大切な役割なのだと思いました。
この記事では、叔母と母の経験をもとに、介護に必要なお金と家族の役割について考えます。
この記事は、介護費用を法律上「誰が負担しなければならないか」を断定するものではありません。実際に介護が必要になったとき、まず本人の年金や資産、公的制度を確認していくという視点から書いています。
一人暮らしが難しくなった叔母を、母が支えることになった
叔母は母の年の離れた姉です。
軽い障害があり、結婚せず、長く両親と一緒に暮らしていました。
両親が亡くなった後は一人で生活を続けていましたが、高齢になり、病気も発症しました。
それまでできていたことも少しずつ難しくなり、母は、「このまま一人で生活を続けるのは難しいのではないか」と考えるようになったそうです。
介護というと、ある日突然寝たきりになり、家族が介護を始めるような場面を想像するかもしれません。
でも、実際にはもっとゆっくり始まることもあります。
薬の管理が難しくなる。
買い物や食事の準備が負担になる。
病気のことが心配になる。
一人で生活を続けることに、家族が不安を感じるようになる。
叔母の場合も、そうした変化の中で「これからどこで暮らすか」を考える必要が出てきました。
母はまず市役所へ相談し、地域包括支援センターにつながった
母が最初にしたのは、市役所へ相談に行くことでした。
母自身も、最初からどの施設に入ればよいのか、どんな制度を使えばよいのか分かっていたわけではありません。
市役所で相談したところ、地域包括支援センターを紹介されたそうです。
そして地域包括支援センターに相談し、最終的に叔母がお世話になることになる施設を紹介していただきました。
現在も地域包括支援センターは、市町村が設置する、高齢者本人や家族のための総合的な相談窓口です。介護だけでなく、生活や権利擁護などを含め、必要に応じて適切な制度やサービスにつなぐ役割があります。
叔母の経験を聞いていると「何をしたらよいか分からないなら、まず相談していい」ということがよく分かります。
家族が介護施設や制度のことをすべて調べてから相談する必要はありません。
何から始めたらいいのか分からない状態だからこそ、公的な相談窓口を利用してよいのだと思います。
母と叔母は、一緒に施設を見に行った
母は紹介された施設へ、叔母本人と一緒に見学に行きました。
叔母が最終的に入居したのは、介護老人福祉施設、いわゆる特別養護老人ホームでした。
現在、特別養護老人ホームへの新規入所は原則として要介護3以上で、要介護1・2の場合でも、在宅生活が難しいやむを得ない事情がある場合には特例的な入所が認められる仕組みがあります。
ただ、私が叔母のケースで大切だったと思うのは、制度の説明以上に、実際に本人が暮らす場所を、本人と一緒に見たことです。
叔母が入った施設は個室でした。
一人で過ごせる空間がありながら、広間へ行けばレクリエーションなどを通じて人と関わることもできました。
また、叔母には持病があったため、医療面も重要でした。
その施設には日中看護師がいて、健康状態を見てもらえるほか、叔母に必要だった医療的な対応も可能でした。
どんな医療ケアに対応できるか、看護職員がいる時間帯、夜間の対応などは施設によって違います。
だからこそ、パンフレットの費用や設備だけを見るのではなく、「ここでこの人が実際に暮らしていけるだろうか」という目で見学することが大切なのだと思います。
叔母の高齢期を支えたのは、叔母自身のために残されたお金だった
叔母には、自分名義の資産がありました。
叔母の父は、障害があり未婚だった娘が、自分たちの死後も生活に困らないようにと、将来を考えてお金を残していました。
そのお金が、高齢になった叔母の暮らしを支えることになりました。
叔母は施設へ入った後も、自分の資産から施設費や生活に必要なお金を支払うことができました。
母が自分の老後資金を取り崩して、叔母の施設費を負担する必要はありませんでした。
介護保険サービスを利用した場合、本人の所得に応じてサービス費の1割、一定以上の所得がある場合は2割または3割を負担します。施設に入居した場合は、それに加えて居住費、食費、日常生活費なども必要になります。所得や負担額に応じた軽減制度もあります。
叔母に資産があったから施設に入れた、という単純な話ではありません。
でも、自分の暮らしに必要なお金を、自分のお金から出せたことは大きかったと思います。
父親が娘の将来を心配して残したお金は、単なる「相続財産」ではなく、結果として叔母の高齢期の暮らしを支えるためのお金になりました。
私はこのことから、資産は残すためだけではなく、自分自身が最後まで暮らすために使っていいと改めて感じました。

介護費用を考えるとき、まず本人の年金や資産を確認する
親の介護が必要になったとき、「子どもの自分はいくら出せばいいのだろう」と、先に考えてしまうこともあると思います。
でも、その前に確認したいのは、本人にはどのくらいの収入と資産があり、そのお金でどこまで本人の暮らしを支えられるかということです。
たとえば、
- 毎月の年金額
- 預貯金
- 株式や投資信託などの金融資産
- 保険や個人年金
- 不動産
- 借入れ
- 毎月必要な生活費
- 通帳や重要書類がどこにあるか
などです。
もちろん「資産があるなら全部使えばいい」という意味ではありません。
どのくらいの期間介護が続くかも分かりませんし、医療費や住まいなど、これから必要になるお金もあります。
だからこそ、まず全体を把握することが大切です。
親が長年築いてきたお金は、子どもに残すためだけのお金ではありません。
介護や医療、住まい、日々の生活、楽しみ。
親のお金は、まず親自身の人生のために使うこと。
私はそう考えています。
家族の役割は、介護費用を出すことだけではない
叔母のケースで、母が担った役割は、介護費用を自分で負担することではありませんでした。
母がしたのは、
- 市役所へ相談すること。
- 地域包括支援センターにつながること。
- 叔母と一緒に施設を見に行くこと。
- 入居に必要な手続きを支えること。
- 叔母のお金が、叔母自身の暮らしのために使えるよう支えること。
- そして入居後も施設へ通い、亡くなるまで見守ることでした。
お金があっても、一人で施設を探したり、必要な手続きをしたりすることが難しくなることがあります。
逆に、家族に気持ちがあっても、必要な制度や専門職につながらなければ、すべてを家族だけで背負うことになってしまいます。
本人が一人では難しくなったところを支え、公的な制度や専門職につなぐ。
本人が安心して暮らせる場所を一緒に考える。
そして、本人のお金が本人の暮らしのために使われるよう支える。
それも介護における家族の大切な役割なのだと、私は母と叔母を見て感じました。
本人が元気なうちに、お金と希望を確認しておく
介護が必要になってから、親のお金や希望を初めて確認するのは簡単ではありません。
特に認知症などによって判断能力が低下すると、「家族だから」という理由だけで、本人名義の預金を自由に動かしたり、本人に代わってすべての契約をしたりできるわけではありません。
状況によっては、成年後見制度や任意後見など、財産管理や契約を支える法的な仕組みを検討することもあります。
この部分は家庭の状況や資産内容によって適した方法が違うため、別の記事で詳しくまとめています。

介護について考えるとき、いきなり親に、「貯金はいくらあるの?」と聞く必要はないと思います。
まずは、
くらいから始めてもよいのではないでしょうか。
たとえば、
- 年金や保険について
- 主な金融機関
- 通帳や重要書類の保管場所
- 自宅で暮らせなくなったらどうしたいか
- 施設への入居についてどう思っているか
- 医療や看取りについての希望
- 手続きが難しくなったら誰に頼みたいか
などです。
すべてを一度に話す必要はありません。
でも、本人が自分の希望を伝えられるうちに少しずつ話しておくことには、大きな意味があると思います。
母が元気な今だから、私も考えておきたい
現在、私の母は80代ですが、とても元気です。
母自身にも年金や自分名義の資産があります。
今すぐ介護について何かを決めなければならない状況ではありません。
それでも私は、叔母のことを見てきたからこそ、母が元気な今のうちに話しておけることは話しておきたいと思っています。
- どこにお金があるのか。
- 介護が必要になったら、母自身のお金をどう使っていくのか。
- どんな暮らしを望んでいるのか。
- 施設についてどう考えているのか。
お金についても、私は「増やすこと」だけが大切だとは思っていません。
高齢になればなおさら、必要なときに、自分のお金を自分のために使えることが大切になります。
叔母の経験は、母自身の高齢期を考えるうえでも、私にとって大きな参考になっています。
まとめ|本人のお金と家族の支え、その両方が介護を支える
叔母には、父親が将来を考えて残してくれた、自分自身の暮らしを支えるためのお金がありました。
そのお金によって、施設へ入居した後も必要な生活を続けることができました。
でも、お金だけですべてが解決したわけではありません。
市役所へ相談したのは母です。
地域包括支援センターにつながり、叔母と一緒に施設を見学したのも母。
入居後も通い、最後まで叔母を見守りました。
本人のお金が本人の暮らしを支え、家族はそのお金や制度を本人の安心につなげる。
私は叔母と母の経験を見て、それも介護における家族の役割なのだと思うようになりました。
介護費用のことを考えると「自分はいくら払わなければならないのだろう」と不安になるかもしれません。
でも、その前にできることがあります。
- 本人にはどんな収入や資産があるのか。
- 利用できる公的制度は何か。
- 本人はどんな暮らしを望んでいるのか。
- そして家族は、何を支えることができるのか。
元気なうちに少しずつ確認しておくことが、いざというときの選択肢につながります。
自分のお金は、自分が最後まで安心して暮らすためにも使う。
そして家族は、そのお金と制度が本人の安心につながるよう支える。
叔母と母の経験から、私はそんなことを学びました。
