親の認知症に備えて確認したいお金と家のこと|家族信託と成年後見制度

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親が高齢になり、物忘れが増えたり、お金の管理が難しくなったりしたとき、あなたはどこまで
手助けできるのでしょうか。

家族なのだから、必要になれば親の預金を引き出し、介護費用に使える。
親が住まなくなった家も、家族が相談して売却できる。
そう思っている方もいるかもしれません。

けれど家族が親の生活を支えていることと、親の財産を法的に管理・処分できることは、別です
本人の判断能力が低下すると、預貯金の払戻しや解約、不動産の売却などを進めにくくなることがあります。

私の母も、一人暮らしの姉である叔母を、長い間支えてきました。
母は叔母の暮らしや財産の状況をよく分かっていました。
それでも、叔母の財産を管理する権限があったわけではありません。

この記事では、叔母と母の経験をもとに、家族信託と成年後見制度の違い、そして親が元気なうちに確認しておきたいお金と家のことについて、一緒に考えていきます。

目次

一人暮らしの叔母に現れた小さな変化

叔母は、長年一人で暮らしていました。
母は一人暮らしの姉を気にかけ、こまめに家へ通っていました。

けれど、叔母が年齢を重ねるにつれて、暮らしの中に少しずつ変化が現れるようになりました。

  • 部屋を片付けられなくなる
  • どこに何を置いたのか分からなくなる
  • 家に同じ物があるのに、また同じ物を買って帰ってくる

以前なら普通にできていたことが、少しずつ難しくなっていきました。

一人で生活を続けることへの不安だけでなく、母はお金の面も心配していました。
判断力が低下した叔母が、悪意のある人に騙されたり、必要のない契約を結んだりするのではないか。
そう感じるようになったのです。

判断能力の低下は、ある日突然、誰の目にも分かる形で始まるとは限りません。

家族が小さな変化に気づいた頃には、財産や将来について本人と落ち着いて話し合える時間が、すでに少なくなっている場合もあります。

家族が支えていても、本人の財産は自由に動かせない

母は叔母の家へ通い、買い物や片付けなど、日常生活を支えていました。
しかし、生活を手助けすることと、本人に代わって法律上の手続をすることは、別です。

家族であるというだけで、当然に次のことができるわけではありません。

  • 預貯金を解約する
  • 金融商品を売却する
  • 保険を解約する
  • 不動産を売却する
  • 本人に代わって重要な契約を結ぶ

認知症になった瞬間に、すべての口座や財産が一律に「凍結」されるわけではありません。
ただし、金融機関などが本人の意思を確認できない場合、預金の払戻しや解約などを進めにくくなることがあります。
通帳やキャッシュカードを家族が預かっていることと、正式な代理権があることも、同じではありません。

以前の記事では、親の介護費用は、まず親本人の年金や資産から考えることをお伝えしました。
しかし、本人に介護費用をまかなえる資産があっても、必要なときにその資産を動かせるとは限らないのです。

家族なんだから、いざとなったら親のお金でなんとかできる…って思いがちです。

判断能力が低下した人を支える「成年後見制度」

認知症などで判断能力が十分でなくなった人を、法律面から支援する制度が成年後見制度(判断能力が低下した人に代わって、財産管理などを行う人を決める制度)です。

法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」があり、家庭裁判所が補助人・保佐人・成年後見人を選任します。

本人が元気なうちに、任せたい人や支援内容を契約で決めておく「任意後見」もあります。
任意後見契約は、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が生じます。

成年後見制度は、本人の権利と財産を守るための大切な制度です。
一方で、知っておきたい特徴もあります。

  • 法定後見では、家族が希望した人が必ず後見人に選ばれるとは限りません。

    弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。
  • 預金の解約や不動産の手続など、制度を利用するきっかけとなった問題が解決した後も、原則として本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで後見は続きます。

制度を利用すべきかどうかは、こうした特徴も理解したうえで考える必要があります。

元気なうちに準備する方法の一つ「家族信託」

本人が契約内容を理解し、自分の意思を示せるうちに準備する方法の一つが、家族信託(家族に財産の管理を任せる契約)です。

家族信託では、例えば親が自分の財産を信頼できる子どもなどに託し、決められた目的に沿って管理してもらいます。
一般的には、次の3者で考えます。

  • 委託者:財産を託す人
    (例:親)
  • 受託者:財産の管理を任される人
    (例:子ども)
  • 受益者:財産から利益を受ける人
    (例:親)

親が委託者兼受益者、子どもが受託者となり、親の預貯金や不動産を、親の生活費や介護費のために管理する。
そうした設計が考えられます。
認知症などに備えた財産管理の方法の一つとして、親族間で信託を活用する方法があります。
ただし、家族信託は万能ではありません。

  • 信託契約に入れていない財産は管理できません
  • 本人以外が所有する財産や、共有不動産の別の共有者の持分まで動かせるわけではありません
  • 契約時には、本人が「誰に、どの財産を、何の目的で任せるのか」を理解して意思表示できることが必要です

家族信託と成年後見制度は、どちらが優れているというものではなく、役割が異なる制度です。

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比較する点家族信託成年後見制度
主な準備時期本人が契約内容を理解できるうち判断能力の低下後も利用できる
財産を管理する人契約で家族などを決める家庭裁判所が選任する
対象となる財産信託契約に入れた財産本人の財産全般を法律上支援
管理の目的契約で定めた目的に沿う本人の権利と財産を守る
家庭裁判所の関与通常の家族信託では基本的にない法定後見では家庭裁判所が関与

家庭によっては、家族信託・任意後見・遺言書・金融機関の代理人制度などを組み合わせることもあります。

母は家が共有名義だと知っていた。それでも口を出せなかった

叔母が暮らしていた家は、もともと母たちの両親の家でした。
両親が亡くなった後、その家は叔母と、長男の妻との共有名義になっていました。

母は、その権利関係を知っていました。
しかし母自身は、その家を相続しておらず、所有者でもありません。
叔母が一人で暮らせない状態になっても、母の判断で家を売ったり、使い方や処分方法を決めたりすることはできませんでした。

事情を知っていることと、財産を動かす権限があることは、別なのです。

一方、叔母は長い間その家に一人で住んでいたため、家全体が自分だけのものだと思っていました。
施設へ入った後も、母に「この家はあなたにあげるからね」と話していたそうです。
叔母は、自分の財産をすべて母へ相続させる内容の遺言書も残していました。

しかし、叔母が母へ引き継がせることができるのは、叔母自身の財産や持分の範囲です。

母は、共有名義であることを叔母に説明しようとも考えました。
でも、その頃には叔母の判断能力が低下しており、説明しても理解してもらうことは難しい状態でした。
叔母の思いを否定するだけになるのではないか——そう考え、説明しても仕方がないと感じたそうです。

遺言書があっても、家の処分は進まなかった

叔母が亡くなった後、叔母の持分は遺言書によって母へ引き継がれました。
しかし、家のもう一方の持分は長男の妻のものです。

共有不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。
けれど当時は、その持分をめぐる話し合いを進めることが難しい状況にあり、家の処分はなかなか進みませんでした。
空き家となった家の管理や家財の片付けなど、実際の作業は母が担わなくてはなりませんでした。

その後、その持分は県外に住むご親族が相続することになり、母とその方が話し合って、ようやく家を売却することができました。

叔母は遺言書を残していました。
母も家の権利関係を知っていました。
それでも、共有者の事情や意思がそろわなければ、家全体の処分は進められなかったのです。

遺言書は大切です。
けれど、遺言書があれば、すべての財産の問題が解決するわけではありません。

家族信託を知っていれば、解決したのか

母は成年後見制度については知っていましたが、当時、家族信託という方法は知りませんでした。

では、叔母が元気なうちに家族信託を利用していれば、家の問題はすべて解決したのでしょうか。
必ずしも、そうとは言えません。

叔母が家族信託で管理を任せられるのは、基本的に叔母自身が所有する持分です。
もう一人の共有者の持分まで、叔母や母が自由に管理・処分できるわけではありません。

それでも、叔母に判断能力があるうちに専門家へ相談していれば、

  • 叔母が所有している財産と持分
  • 叔母の持分を誰に管理してもらうか
  • 介護費用のために活用できるか
  • 遺言書と家族信託をどう使い分けるか
  • 共有不動産にどのような問題が起こり得るか

を、早い段階で整理できた可能性はあります。

家族信託は、すべてを解決する魔法の制度ではありません。
けれど、専門家に相談することは
何ができて、何ができないのか」を知り、家庭の問題を整理するきっかけになります。

親が元気なうちに、あなたが確認しておきたいこと

親の財産について、細かな金額まですべて聞き出す必要はありません。
まずは、将来手続が必要になったときに困らないよう、次のことを確認しておきたいところです。

お金について

  • 利用している銀行や証券会社
  • 保険や年金
  • 借入金の有無
  • 通帳・印鑑・重要書類の保管場所
  • 誰に財産管理を任せたいか

家について

  • 登記上の名義
  • 共有名義かどうか
  • それぞれの持分
  • 将来も住み続けたいか
  • 施設へ入った場合に売却するか
  • 売却代金を介護費用に使いたいか

本人の希望について

  • どの財産を、何のために使いたいか
  • 誰に管理を任せたいか
  • 亡くなった後、誰に何を引き継ぎたいか
  • 遺言書・任意後見・家族信託を検討するか

話し合う目的は、家族が親の財産を早く受け取ることではありません。
親本人のお金や家を、最後まで親本人の暮らしのために使えるようにしておくことです。

制度が分からないからこそ、専門家に相談する

親の判断能力が低下したときに起こる問題は、家庭によって異なります。
預貯金だけの家庭もあれば、不動産や株式を持っている家庭もあります。
不動産が共有名義になっていたり、遠方に住む親族が関係していたりすることもあります。

本人が遺言書を残していても、それだけでは解決できない問題があるかもしれません。
反対に、家族信託を利用しなくても、任意後見や遺言書、金融機関の代理人制度などで備えられる場合もあります。

制度は複雑で、一般の人だけですべてを理解し、自分の家庭に合う方法を判断するのは簡単ではありません。

大切なのは、家族信託を利用すること自体を目的にするのではなく、本人に判断能力があるうちに、家庭に合う方法を専門家と一緒に整理することです。

家族信託の「おやとこ」で相談する

家族信託の「おやとこ」は、家族構成や財産の状況を聞いたうえで、家族信託が必要なのか、ほかに適した対策がないか、費用がどのくらいかかるかなどを相談できるサービスです。

初回相談は無料で、相談だけでも利用できます
全国対応で、オンライン相談にも対応しています。

「まず今の状況と、考えられる選択肢を整理したい。」
そんなときの相談先の一つとして、検討してみてもよいかもしれません。

▼ 家族信託「おやとこ」公式サイト

認知症による資産凍結から親を守る|家族信託のおやとこ

まとめ|家庭に合う方法を、本人が元気なうちに考える

親のお金や家について話すことは、少し気が重いかもしれません。
しかし、問題が起きてからでは、本人の希望を確認することも、利用できる方法を選ぶことも難しくなる場合があります。

叔母のケースでは、母は家の権利関係を知っていました。
それでも、所有者でも法的な代理人でもない母には、叔母の財産や家の処分を決めることができませんでした。
遺言書があっても、共有不動産の問題は残りました。
そして、家族信託を知っていたとしても、すべてを解決できたとは限りません。

それぞれの家庭には、それぞれ異なる事情があります。
家族だけで答えを出す必要はありません。

制度が複雑で分からないからこそ、本人が元気なうちに専門家へ相談し、何を準備できるのかを整理しておく。
それが、親の財産を家族のためではなく、最後まで親本人の暮らしのために使うことにつながるのだと思います。

この記事を書いた人

「ひとり立ちマネー」運営|50代・元銀行員

高配当・増配株+インデックスで、
自分名義の資産。
投資歴10年・配当金年120万円(税引後)
女性が自分の人生を自分で選ぶためのお金の
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