83歳の母のネット銀行が心配|やめさせずに詐欺から守る4つの方法

高齢の親がインターネットで銀行のお金を動かしている。
そう聞くと、心配になる方は多いと思います。

うちの母は83歳です。
定年まで仕事でパソコンを使っていたので、今も自分で操作できますし、使うこと自体を楽しんでいます。
ネット銀行もネット証券も、自分で管理しています。

正直に言えば、私は心配です。
でも、だからやめさせようとは思いませんでした。

この記事では、母にネットの利用をやめてもらう代わりに、私たち家族が何を整えてきたかをお話しします。
読み終わる頃には、あなたのご実家でも今日から始められることが、いくつか見つかると思います。

目次

やめさせるのではなく、続けられるように整える

先に結論からお伝えします。

私が選んだのは、母からネット銀行を取り上げることではなく、母が自分で自分を守れるように、周りの仕組みを整えることでした。

「高齢の親にネット銀行は危ない」という記事はたくさんあります。書かれていることは、だいたい正しいと思います。
でも、そこで見落とされがちなことがひとつあります。

母にとってパソコンは、長年の仕事の道具であり、今も続いている楽しみです。
自分のお金を自分で管理できるという感覚も、たぶん母の張り合いになっています。
それを「危ないから」と取り上げてしまうことが、本当にいちばんいい方法なのか。
私はそこで立ち止まりました。

もちろん、判断力が落ちてきたときには別の対応が必要になります。
そのときのことは、この記事の後半でお話しします。

83歳の母は、ネット銀行もネット証券も使っている

母は、パソコンで残高を確認し、振込もします。ネット証券の口座も持っています。

私の心配の中心は、ここです。ネット銀行とネット証券には、通帳がありません。 何がどこにいくらあるのか、家からは見えません。
もし何かあっても、気づくのが遅れます。

そして、もうひとつ心配なことがあります。

優しい人ほど狙われる

母が50代の頃、寸借詐欺(すんしゃくさぎ)にあったことがあります。

寸借詐欺とは、人の善意につけこんで、少しのお金を借りるふりをしてだまし取る手口のことです。
「財布を落として困っている」「交通費が足りない」といった口実で近づいてきます。
金額が数千円から1万円ほどと少ないので、断りにくいのが特徴です。

母のときも、「お金を落として困っている、必ず返しに来るから」と言われて、1万円ほどを渡してしまいました。
もちろん、その人が戻ってくることはありませんでした。

母は、優しい人です。困っている人を放っておけない人です。
そして詐欺という手口は、まさにそこを狙ってきます。
「人の善意につけこむ」というのは、私の感想ではなく、この手口そのものの説明です。

今の詐欺は「怪しい日本語」では見分けられない

もうひとつ、伝えておきたいことがあります。

私のメールボックスには、毎日のように詐欺メールが届きます。
そして最近、明らかに変わったと感じることがあります。
以前のような不自然な日本語のメールが減り、手口が巧妙になってきたのです。これは私の実感です。

昔は「日本語がおかしいから怪しい」と気づけましたが、今はその見分け方が通用しなくなってきています。

IPA(情報処理推進機構)という、国が所管する独立行政法人が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」でも、2026年版ではAIの悪用によってサイバー攻撃が巧妙になっていることが脅威として挙げられています。
個人にとっての脅威としては、フィッシング(本物そっくりの偽メールや偽サイトで情報を盗む手口)が8年連続で選ばれています。
※2026年1月発表の情報です。

だから私は、届いた詐欺メールを、そのまま母に見せるようにしています。

「こういうのが来たよ」と、実物を共有するのです。
手口の説明を言葉でするより、実際に届いたメールを見てもらうほうが、はるかに伝わります。
文面が自然であることも、見ればわかります。

やめさせずに守るために、私と母がしている4つのこと

ここからは、実際にしていることをお伝えします。特別なことはひとつもありません。

① おかしいと思ったら、自分で判断しない

母には「少しでもおかしいと思ったら、自分で判断しないで、私たち子どもに相談して」と伝えてあります。

これがいちばん大事だと思っています。
詐欺の手口は次々に新しくなるので、すべてを覚えることはできません。
でも「ひとりで決めない」というルールがひとつあれば、たいていの場面で間に合います。

ここで大切なのは、相談しやすい空気をつくっておくことです。
「なんでそんなのに引っかかるの」と言われると思ったら、人は相談しなくなります。
だまされかけたことを話せる関係のほうが、どんな対策よりも効きます。

私が気をつけているのは、先に母の自尊心を傷つけないか考えてから動くことです。
守るためだとしても、これまでできていたことを取り上げられるのは、つらいことだと思うからです。

② パスワードを使い回さない

同じパスワードをあちこちで使っていると、どこかひとつが漏れたときに、他のサービスにも入られてしまいます。

母にも、使い回しをしないように伝えています。
特にお金に関わるサービスは、必ず別のものにしています

③ 家の電話は、いつも留守番電話にしておく

知らない人の電話には出ない。
これを意識でやろうとすると難しいので、仕組みにしてしまいます。

家の電話は常に留守番電話にしておき、用のある人だけ用件を残してもらう。
本当に必要な相手なら、必ずメッセージを残します。
出なくていいのだと決めてしまえば、迷う場面そのものがなくなります。

④ スマホには、着信をふるいにかけるアプリを入れる

母のスマートフォンには「電話帳ナビ」というアプリを入れています。
かかってきた電話番号が、他の人からどう報告されているかを表示してくれるものです。

無料で使える機能があり、有料版もあります。
(料金や機能は変わることがあるので、各ストアでご確認ください)

ただし、これを入れれば詐欺を防げる、というものではありません。
あくまで着信をふるいにかける道具のひとつとして使っています。
私自身も、海外からの着信には一切出ないようにしています。

ネット銀行・ネット証券だからこそ整えている4つの設定

ここからは、ネットでお金を扱う場合に特有の備えです。
母も私も、同じように設定しています。

① 1日に動かせる金額の上限を下げておく

ネット銀行には、1日にいくらまで振り込めるかの上限を設定できます。
ここを低くしておくと、万が一のときに動く金額そのものが小さくなります。

私は普段は低く設定しておき、大きな支払いがあるときだけ一時的に上げて、終わったらまた元に戻しています。
母にも同じようにしてもらっています。

② ログイン・振込・カード利用の通知を受け取る

ログインがあったとき、振込があったとき、クレジットカードを使ったときに、通知が届くようにしています。

③ 二段階認証と、パスキーを使う

二段階認証は、パスワードに加えてもうひとつの確認を求める仕組みです。
母も設定しています。

さらに母は、パスキーという方法も使っています。
パスワードを入力する代わりに、端末の指紋や顔認証などで本人確認をする仕組みです。
二段階認証を回避しようとする手口も出てきているため、より破られにくいとされる方法も併用しています。

正直に書きますが、この設定は少し難しく、家族が一緒にやりました。
83歳がひとりで全部やっているわけではありません。難しいところは家族が手伝う、それでいいのだと思います。
親にやらせるのではなく、一緒に設定する。 それが現実的なやり方です。

④ 「どこに何があるか」のリストをつくっておく

母は、自分の資産がどこにいくらあるかのリストを自分で作っています。
そして、そのリストがどこにしまってあるかを、私に伝えてあります。

これは詐欺対策というより、その先の備えです。
ネット銀行とネット証券には通帳がないため、本人が説明できなくなったとき、家族は口座の存在すら分からなくなる可能性があります。
親が元気なうちにしかできないことのひとつです。

母は「守られる側」にいない

ここまで読んで、娘が母を守っている話だと思われたかもしれません。
でも、書いていて気づいたことがあります。
母は、守られる側にいません。

母は、いつ何をしたかを、できる範囲でノートに記録しています。
振込をした、手続きをした、そういったことを書き留めているのです。
理由を聞いたら、こう言いました。
物忘れが増えてきたから、覚えられなくなってきたときのために、と。

自分の衰えを見据えて、先に手を打っている。
これは、私が母にさせていることではありません。母が自分で決めて、続けていることです。

私がしていることは、その母を手伝っているだけなのだと思います。

それでも、この先のことはまだ決めていない

正直に書きます。この先どうするかは、まだ決まっていません。

今は母が自分で管理できています。
でも、それがいつまで続くかは分かりません。
判断する力が弱くなってきたとき、ネット銀行やネット証券をどうするのか。誰がどうやって引き継ぐのか。
考えなければいけないと思いながら、答えは出ていません。

ひとつ知っておきたいのは、認知症などで判断する力が失われたと見なされると、家族であっても本人の口座からお金を動かせなくなることがある、ということです。
介護の費用が必要になったときに、本人のお金が使えないという事態が起こりえます。

そのための制度として、家族信託や成年後見制度があります。
元気なうちにしか選べない選択肢もあるので、知っておくだけでも違います。

親のお金をどう考えるかについては、こちらでもお話ししています。

困ったとき、迷ったときの相談先

判断に迷ったときに使える窓口があります。
実家の電話のそばに書いて貼っておくと、いざというときに役立ちます。

消費者ホットライン 188(いやや)

商品やサービスのトラブル、怪しい勧誘などの相談窓口です。
お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
年末年始などを除き原則毎日利用できます。相談は無料ですが、通話料はかかります。

警察相談専用電話 #9110

事件になる前の相談窓口です。
受付は平日の日中が中心で、都道府県によって対応が異なります。
ダイヤル回線や一部のIP電話からはつながりません。

緊急のときは110番

今まさに被害にあっている、あやしい人が家に来ているといった場合は、#9110ではなく110番です。

※2026年7月時点の情報です。

まとめ

  • 高齢の親のネット銀行が心配でも、やめさせる以外の選択肢がある
  • だまされるのは、うかつだからではない。
    優しい人ほど狙われる
  • 今の詐欺は日本語の不自然さでは見分けられない。
    手口を実物で共有するのがいちばん伝わる
  • 相談ルール・パスワード・留守番電話・着信アプリの4つで、日常の入口を守る
  • 限度額・通知・二段階認証・資産リストの4つで、ネット特有のリスクに備える
  • 難しい設定は、家族が一緒にやればいい

今日できる小さな一歩をひとつだけ挙げるなら、実家に電話して「最近、変な電話やメール来てない?」と聞いてみることです。

対策の説明から入らなくて大丈夫です。
この一言が言える関係があることが、どんな設定よりも強い備えになります。

※この記事は、私自身と家族が実際にしていることをもとに書いています。
ご家庭の状況によって適切な方法は変わります。
制度や手続きの個別の判断が必要な場合は、専門家や公的な窓口にご相談ください。

この記事を書いた人

「ひとり立ちマネー」運営|50代・元銀行員

高配当・増配株+インデックスで、
自分名義の資産。
投資歴10年・配当金年120万円(税引後)
女性が自分の人生を自分で選ぶためのお金の
考え方を発信しています。

目次