80代の母のネット銀行が心配|やめさせずに続けるための詐欺・不正送金対策

高齢の親がインターネットで銀行のお金を動かしている。
そう聞くと、「大丈夫なの?」と心配になる人は多いと思います。

私の母は現在84歳です。
定年まで仕事でパソコンを使っていたこともあり、今でもパソコンを使うことを楽しんでいます。

ネット銀行で残高を確認し、自分で振込もします。
ネット証券の口座も持っています。

正直に言えば、私も心配です。
でも、「危ないから、もう使うのをやめて」とは言いませんでした。
母にとって、自分のお金を自分で管理することは、単なる便利さだけではないと思うからです。

そこで私たちは、ネット銀行やネット証券を取り上げるのではなく、できることは続けながら、危険をできるだけ減らす仕組みを作るという方法を選んでいます。

目次

危ないからやめさせる、だけが答えではない

高齢の親がネット銀行を使っていると、子どもの側からすれば心配になります。

フィッシング詐欺、不正ログイン、偽のサポート画面、知らない人からの電話。
考え始めれば、心配はいくらでも出てきます。

だからといって、今まで自分でできていたことをすべて取り上げれば安心なのでしょうか。
私はそこに少し違和感がありました。

母は長年パソコンを仕事で使ってきました。
今も自分で調べたり、お金を管理したりすることを楽しんでいます。
自分でできることがあること自体が、生活の張り合いにもなっているように見えます。

もちろん、判断する力が低下してきたら、別の対応を考えなければならないでしょう。

でも、今できているのなら「できなくなる前から全部やめさせる」のではなく、「続けるために何を整えられるか」を考えたいと思っています。

今は「怪しいメールを見抜く」だけでは難しい

私のメールボックスにも、毎日のように怪しいメールが届きます。
以前は「この日本語、おかしいな」とすぐに分かるものも多かったように思います。

でも最近は、文章も自然で、本物のサービスから来たメールのように見えるものがあります。

IPA(情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、個人向けの脅威として「フィッシングによる個人情報等の詐取」が8年連続で選ばれ、「インターネットバンキングの不正利用」も挙げられています。
また、組織向けでは「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位に入り、AIによって攻撃の手口が巧妙になる可能性も指摘されています。 

だから私は、実際に自分に届いた詐欺メールを母にも見せます。
「こういうメールが来たよ」と実物を見てもらうのです。
手口を言葉だけで説明するより、「こんなに普通の文章で届くんだ」と知ってもらう方が伝わります。

ただ、最終的には「怪しいメールを見抜く力」に頼りすぎない方がいいと思っています。

私と母が決めている、日常のルール

① 少しでもおかしいと思ったら、一人で判断しない

母には、「少しでも変だと思ったら、その場で決めないで一度連絡して」と伝えています。

詐欺の手口は次々と変わります。
母がすべて覚えることはできません。
だから、「分からないときは一人で決めない」というルールを一つ決めています。

そして、このルールを機能させるには、相談しやすい関係でいることも大切だと思っています。
「どうしてそんなものを信じたの?」と責められると思ったら、次から話してくれなくなるかもしれません。
だまされかけたことも、変な電話が来たことも、気軽に話せること自体が一つの防犯対策だと思っています。

② 銀行や証券会社のメール・SMSからログインしない

これは今、特に大切にしているルールです。
銀行や証券会社を名乗るメールに、「本人確認が必要です」「口座を確認してください」「不正アクセスがありました」などと書いてあっても、メールやSMSに書かれたリンクからはログインしない。

確認したいときは、あらかじめ登録した正しいサイトのブックマークや公式アプリから自分で開きます。

金融庁も、見覚えのある送信者からのメールやSMSであってもリンクを開かず、証券会社等へは事前に登録した正しいURLのブックマークからアクセスするよう注意喚起しています。 

「本物か偽物かを見抜く」より、そもそもメールのリンクから銀行や証券会社へ入らない。
その方が母にも私にも分かりやすいルールです。

③ パスワードを使い回さない

同じパスワードを複数のサービスで使っていると、どこか一つから情報が漏れたときに、ほかのサービスへ不正ログインされる可能性があります。

母も、お金に関係するサービスではパスワードを使い回さないようにしています。
金融庁も、パスワードを使う場合には使い回しを避け、長く推測されにくいものを使うよう案内しています。 

④ 家の電話は基本的に留守番電話にする

知らない番号から電話がかかってきても、すぐには出ません。
家の電話は基本的に留守番電話にして、まず用件を確認します。
必要な相手なら、内容を確認した後に折り返せばいい。

電話に出てから、「この人は怪しいかな?」と判断するのではなく、最初から知らない相手と会話しない仕組みにしておくという考え方です。

⑤ スマホの知らない着信も、一度ふるいにかける

母のスマートフォンには「電話帳ナビ」というアプリを入れています。

着信した番号について、迷惑電話などの情報を確認するために使っています。
もちろん、このようなアプリを入れれば詐欺を防げるわけではありません。
あくまで、「この電話に出て大丈夫かな」と考えるための補助として利用しています。

私自身も、心当たりのない海外からの着信には出ないようにしています。

アプリの機能や料金は変更されることがあります。利用する場合は最新情報をご確認ください。

ネット銀行・ネット証券で整えているセキュリティ設定

日常のルールだけでなく、口座側の設定もできる範囲で整えています。

① 振込限度額を必要以上に高くしない

ネット銀行では、1日に振り込める金額の上限を設定できる場合があります。

私は普段必要になる金額を考えて、振込限度額を必要以上に高くしないようにしています。
母の口座も同じ考え方です。
万一、不正に操作されたときに、一度に大きなお金が動くリスクを少しでも小さくするためです。

② ログインや取引の通知を利用する

利用している金融機関で、

  • ログイン
  • 振込
  • 出金
  • クレジットカード利用
  • 登録情報の変更

などの通知機能が使える場合は、できるだけ有効にしています。
何か起きたときに、早く気づける仕組みを作っておくことが目的です。
金融庁も、証券会社等が提供する多要素認証や通知サービスを有効にするよう案内しています。 

③ 金融機関が提供する多要素認証やパスキーを使う

母も、多要素認証など、利用している金融機関が提供するセキュリティ機能を設定しています。

利用できるところでは、パスキーも使っています。
パスキーは、パスワードを入力する代わりに、端末の顔認証や指紋認証などを利用して本人確認を行う仕組みです。

金融庁も、証券会社等でパスキー認証などフィッシングに強い認証方法が提供された場合には、利用設定を行うよう案内しています。 

ただ、ここは正直に書いておきたいことがあります。
84歳の母が、一人ですべて設定しているわけではありません。

難しい設定は、家族が一緒にやりました。
高齢の親に、「これを設定しておいてね」と任せるより、一緒に画面を見ながら設定する。
私はそれでいいと思っています。

④ パソコンやスマホを古い状態のまま使わない

ネット銀行やネット証券を使うパソコンやスマートフォンは、OSやブラウザなどをできるだけ最新の状態にしておきます。

金融庁も、マルウェアによる情報窃取を防ぐため、PCやスマートフォンのOSなどを最新の状態に保つことを勧めています。 

高齢者だから特別な対策というより、これは私自身も同じです。

資産の場所は残す。でもパスワードまでは共有しない

ネット銀行やネット証券には、紙の通帳がないことも多くあります。

本人が元気なうちは問題ありません。
でも、本人が説明できなくなったとき、家族がその口座の存在自体を知らないということが起こるかもしれません。

そのため母は「どこにどんな資産があるか」を自分でリストにしています。
そして、そのリストがどこに保管されているのかを私にも伝えてあります。

ただし、ログインパスワードや暗証番号まで一緒に書いて共有する、という意味ではありません。
目的は、家族が母になりすましてログインできるようにすることではなく「どの金融機関に何があるのか」が分からなくならないようにすることです。

これは詐欺対策というより、もう少し先のための備えです。
親が元気で、自分で整理できるうちだからこそできることだと思います。

母は「守られるだけの側」ではない

ここまで読むと、「娘が高齢の母を守っている話」に見えるかもしれません。

でも、私は少し違うと思っています。
母は、自分がいつ何をしたのか、できる範囲でノートに記録しています。

理由を聞くと、「物忘れが増えてきたから。もっと覚えられなくなったときのために」と言います。
自分が年齢を重ね、今までと同じようにはできなくなる可能性を考えて、自分で先回りして準備しているのです。

これは、私が母にやらせていることではなく、母自身が考えて続けています。
私がしているのは、母が難しいところを少し手伝うことです。

高齢の親を支えるというと、「子どもが管理する」と考えがちです。
でも、今できるうちは本人が中心でいい。
本人ができることを続け、難しいところだけ家族が補う。
私は今のところ、それくらいの距離感がいいと思っています。

それでも、この先どうするかはまだ決めていない

ここまで対策を書きましたが、この先についてすべて答えが出ているわけではありません。

今は母が自分でお金を管理できますが、、それがいつまで続くかは分かりません。
判断する力が弱くなってきたとき、ネット銀行やネット証券をどうするのか。
誰がどのように支えるのか。

本人のお金を本人の介護や生活のために、どう使えるようにしておくのか。
これはこれから考えていかなければならないことです。

家族だからといって、本人の判断能力が低下した後に自由に預金や金融資産を動かせるわけではありません。

家族信託や成年後見制度など、元気なうちに考えられる仕組みもあります。
ただし、どの制度が合うかは家庭によって違います。

このことについては、叔母と母の経験をもとに別の記事で詳しく書きました。

また、介護費用と本人のお金についてはこちらです。

もし被害に遭いそうになったら、どこへ連絡する?

対策をしていても、完全に防げるとは限りません。
そのため、「何かあったとき、どこへ連絡するか」も確認しておきたいところです。

銀行・証券会社の公式窓口

偽サイトへIDやパスワードを入力してしまった。
身に覚えのない振込や取引がある。

そんなときは、まず利用している銀行や証券会社の公式サイトに記載された窓口へ早めに連絡します。

メールに記載された電話番号やリンクではなく、自分で公式サイト・公式アプリから確認します。

金融庁も、不審なサイトへ情報を入力した可能性や不審な取引がある場合、利用している証券会社等へ連絡し、速やかにパスワード等を変更するよう案内しています。 

消費者ホットライン「188」

怪しい勧誘や商品・サービスのトラブルなどは、消費者ホットライン188(いやや)へ相談できます。
最寄りの消費生活センターなどにつながります。
相談は無料ですが、相談窓口につながった時点から通話料金がかかります。 

警察相談専用電話「#9110」

緊急ではないものの、詐欺かもしれない、警察へ相談したいという場合には#9110があります。
受付時間は都道府県によって異なります。
警察庁の案内では平日の日中が基本で、時間外の対応も地域によって異なります。 

今まさに危険なら110番

不審な人物が自宅に来ている。
今まさに被害に遭っている。
そのような緊急の対応が必要な場合は、#9110ではなく110番です。
電話番号は、実家の電話の近くなど、親がすぐ分かるところに置いておいてもいいと思います。

まとめ|取り上げるのではなく、できることを続けるために備える

高齢の母がネット銀行やネット証券を使っていることを、私は今でも心配しています。
でも、「高齢だから危ない。だからやめさせよう」だけが答えだとは思っていません。

今の母は、自分で考え、自分のお金を管理できます。だから私は、

  • 変だと思ったら一人で決めない
  • メールやSMSのリンクから銀行・証券会社へ入らない
  • パスワードを使い回さない
  • 知らない電話にはすぐ出ない
  • 振込限度額を必要以上に高くしない
  • 多要素認証やパスキー、通知機能を使う
  • 金融機関と資産の所在を記録しておく
  • 難しい設定は家族が一緒にする

という方法で、できるだけ安全に使えるようにしています。

そして一番大切なのは、母自身が対策の中心にいることだと思っています。
子どもが全部管理してしまうのではなく、本人ができるうちは本人がする。
難しくなったところを家族が補う。
その先で判断する力が低下してきたら、また別の方法を考える。
今はその途中です。

今日できることを一つ挙げるなら、親に、「最近、変な電話とかメール来てない?」と聞いてみることかもしれません。
怪しいことがあったときに、「ちょっと聞いてみよう」と思ってもらえる関係を作っておく。
それはセキュリティ設定と同じくらい、それも大切な備えだと思っています。

この記事は、私と家族が実際にしていることと、2026年8月時点の公的機関の注意喚起をもとにまとめています。金融機関によって利用できるセキュリティ機能は異なります。設定や手続きは、利用している金融機関の公式情報をご確認ください。

この記事を書いた人

「ひとりだちノート」運営|元銀行員。
 
家計・資産づくり、親の見守りや暮らしのサポートを実体験から発信。
自分と親の「これから」を少し安心にするヒントをお届けします。

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